病名 肥満症

原因

肥満は、摂取と消費のアンバランスによって起こる単純性肥満が殆どである。

 

★単純性肥満

摂取エネルギー消費エネルギー =過剰摂取エネルギー(蓄積)

  肥満になると、肥満体を支える為に更に多くのエネルギーを摂取するため、

内臓の負担は標準体重に比べて大きく、疲れやすい。

 

診断

肥満とは、

体脂肪組織が相対的に増加した状態をさし、単に体重が増加する事と同意義ではない。

 

肥満の判定は多種多様で、体格指数で計算する方法、標準体重からの判定、

皮下脂肪厚を測定し脂肪厚の判定基準による判定等、種々の方法が用いられているが、

除脂肪組織量とよく相関する「BMI(体格指数)」が一般に用いられている。

 

<BMI(体格指数)の計算法>

 

BMI(Body Mass Index):

体重(kg) ÷( 身長(m)×身長(m) )= BMI値

(BMIの標準値は22)

標準体重=(身長(m)×身長(m))×22

 肥満判定 25以上(*日本肥満学会基準 2011.9

BMI

判定(*)

18.5以下

低体重

18.5〜25未満

普通体重

25〜30未満

肥満(1度)

30〜35未満

肥満(2度)

35〜40未満

肥満(3度)

40以上

肥満(4度)

 *BMI35以上を「高度」肥満  と定義

 

 肥満は、体脂肪の分布状態から脂肪沈着が、腹部に多い男性型肥満と、

臀部・四肢に著しい女性型肥満に分類される。

 

また、皮下に脂肪沈着が起こる皮下脂肪蓄積型肥満(ダイエットの際の問題)と、

臓器の間に脂肪がたまる内臓脂肪蓄積型肥満(生活習慣病を発生しやすい)がある。

 内臓脂肪蓄積過多の指標:腹(臍)周囲長=男性85cm以上、女性90cm以上で肥満判定(*)

*メタボリックシンドローム診断基準の日本の参考データとして現在取り入れられている。

 

症状

一般に疲労しやすく、動作緩慢、呼吸機能、心機能の低下がみられる。

 

合併症を起こしやすく、その合併症は多種多様である。

特に合併しやすい疾患には、糖尿病(発生率は正常者の5倍)、高血圧(同じく3.5倍)、

胆石(約3倍)、通風(2.5倍)、心臓病(2倍)、関節障害(1.5)、不妊症(約3倍)

等がある。

 

この様に肥満が誘因で(結核以外の)多くの疾患が合併しやすくなる事は知られているが、

肥満は生活習慣病と密接な関係があるばかりでなく正常体重者と比較して死亡率も高い。

 

従って、肥満者は肥満症患者として治療を開始し、食品の選択に留意すると共に

過食を予防し、体脂肪の蓄積を促進しないエネルギー摂取方法が必要となる。

 

肥満は年齢と共に増加し(日本人では4050歳代に多い)60歳を超えると減少傾向になる。 

 

解剖学的な発生機序でみると、

脂肪細胞数の増加が主にみられるのは胎生期、乳児期、思春期で、

細胞容量拡大型、肥大性肥満は成人期以降に発症しやすい。

 

予防

単純性肥満

 摂取エネルギー(足し算)を一定量に制限し、

 消費エネルギー(引き算)を増やすことが重要です。

 過剰エネルギー量を減らす為には、

 食事の内容と摂取時間、飲水内容と温度、起床時間、運動等の計画を事前に作成し、

 そのルール等をイメージし、十分に理解しておくことが改善や予防の鍵となります。

 

食事内容の計画を作成する際には、必要な栄養素をバランス良く、

1日3食〜5食で規則的に摂取する習慣をつけ、

一日を通して口の中よりも温かい水分摂取を心がけること。

連続67.5時間程度の睡眠時間を確保し、良い姿勢を心がける事が予防方法となります。

(受診や検査の後、お気軽に栄養指導をご利用下さいませ)

 

コレステロールが腸内細菌によって変化してできるコレステノンという物質に

脂肪の蓄積を妨げる効果が判明した事や、内臓脂肪組織の炎症が肥満の原因の一つであり

腸内細菌により産生される物質には抗炎症作用があるとされるなど、

腸内環境を調える事も肥満予防の重要なカギといえます。

腸内環境を整える為には、前述に加え、腸への刺激物の摂取を控えることや、

冷やしすぎない服装、便秘や下痢の改善も重要となります。

 

また、余計な塩分8gで、体に水分を1kg蓄えるとされています。

浮腫みは冷えに繋がります。冷えると温度を保つために脂肪をつけようと

体は働きかけますので、減塩は肥満予防につながります。

 

改善

治療には、食事による食事療法、適度な運動による運動療法などがあります。

 

1、エネルギー:

肥満度・性別・年齢・生活活動強度等から摂取エネルギー目標が医師から決定されますが、

その摂取エネルギーが、消費エネルギーを上回らない場合も考えられますので、

消費エネルギーを今まで以上に上げる事もポイントとなります。

逆に言えば、消費エネルギー量を日常的に上げることが、食事量確保にも繋がります。

正しい姿勢・腹式呼吸・速歩など、日常生活の中で無理なくできる事を思い出し、

実行する事は、疾患や体重増加の予防改善につながります。

 

低エネルギー食は、炭水化物と脂質を制限する食事となりますが、

1日の摂取カロリーが800kcalを割ってしまうと不足エネルギーは体脂肪の燃焼により補充し、

制限が強すぎるとアシドーシスになる恐れがある為、糖質は100gを下回らない事が肝要。

(アシドーシス:栄養不足状態による酸の産生の過剰,塩基の喪失

   又は酸の排出の低下が起こり,血液の重炭酸 イオンが低下し,pHが低下した状態

     

 

また、極端に減量するより1週間に1kg位の減量が望ましい。

脂質の摂取は、質と量を考慮して、使用し過ぎないよう調理を工夫する。

(しかし、全く油を使わない食生活では、脂溶性ビタミンの吸収不足や、

 脂肪肝になる恐れもありますので、極端な食べ方は逆効果であり、

 バランス摂取が重要と言えます)

 

2、たんぱく質:

日本人の栄養所要量の年齢・性別で該当する必要量を目安に摂取。

(腎臓病等では制限あり)

総量の40〜50%程度は脂身の余り多くない動物性食品を選ぶように心がける。

また、納豆等の大豆のたんぱく質を、範囲内で毎日摂取すると、体重減少に役立ちます。

 

3、脂質:

エネルギー比で20%位。脂溶性ビタミンの吸収率を高める上からも、

ある程度の摂取は必要である。(膵臓炎・肝臓病などでは脂質制限あり)

 

脂質の利用は、味覚上または空腹感を防ぐには有効であるが、

食事の容量としては減量することに繋がるので、効率良く使用することが大切である。

不飽和脂肪酸を多く含む、植物性の油(オリーブ油、ごま油など)を使用すると良い。

 

4、ビタミンおよびミネラル:

一般に肥満食では食事の摂取量が減るので不足になりやすい

(腎臓病などでは一部制限のミネラルがある)。

 

できるだけ多くの食品をとることを目標とし、

不可能な場合は、ビタミン剤などを併用し、その補給をすることも検討すると良い。

 

5、塩分:

塩分は、旨味のある調理法の選択や、表面に最後に味付けする等の調理上の工夫で、

味自体は感じても、1日8g程度の適塩食を目標とする。

濃味では、過食になり易くなる。

(例:味つき無しの生きゅうりが2〜3切れではおかずにはならないが、

 味の濃いきゅうりの漬物が2〜3切れあればご飯が食べられる)

 

6、水分:

特に制限はないのですが(腎臓病や肝臓病の腹水などでは制限あり)、

砂糖や塩の継続的な過剰摂取は肥満の危険度を増しますので、日常的に摂取する飲料は、

甘くない(ダイエットシュガーによる加糖はOK)しょっぱくない飲料が良く、

飲料の温度等は、腸内環境を整える事を意識して、口の中よりも温かく刺激の少ない飲料

(緑茶・紅茶・番茶・ウーロン茶・麦茶など)が最適と言えます。

 

摂取目安は、250ccのマグカップで、

朝起きて1杯、各食事の前・後、入浴後に各1杯(合計8杯)の温かいお茶がオススメ。

(夜中の排尿に目覚める方は、

 遅起きせずに一日の水分摂取をやや午前中寄りに分けて飲むと良い事があります)

 

コーヒーは胃粘膜を外し、肝臓を使ってその色を除去しますので、

体が自分の理想通りに調わぬうちは、「子供にはコーヒーはまだ早い」のと同じように、

まだ、コーヒーは自分の体にはまだ早いのだと思って頂けると改善が早くて、嬉しいです。

コーヒーは、冷たくても、温かくても、刺激物である事には変わりありません。

 

また、冷たい飲み物を一日の中で多く飲む習慣があると、その習慣予想から、

体内の温度が下がらないように、

断熱材の役割である脂肪層を厚くしようと努力してくれますので、太り易くなります。

 

7、食事の回数:

食事回数は三食を規則正しく摂るのが良く、二回食や一回食は、食事時間の間隔が長く

吸収率が増大したり、食事の一回量が増えるため、逆に肥満の原因になり易いです。

お相撲さんは体型維持の為に効率よい方法として、一日2食です。

より痩せたい場合には、1日の総量を5〜6回に分けて計画を立てて下さい。

(朝起きて直ぐ1回目(朝食か朝食前の軽い食事か「食べてから動く」習慣をどうぞ!)、

 最後の食事は、眠る3時間前までに終わらせるように計画ができると、より効果的)

 

食事内容は、5回全てがキッチリした食事というのではなく、

朝食の果物を10時のおやつにお引っ越し、朝食の牛乳やヨーグルトを、

15時18時のおやつに半分けして各100gづつ、

淋しくなった朝食には、量の補いも兼ねて、前晩のおかず(野菜と蛋白源のおかず)を

残しておき、普段通りのパンやご飯に合わせるという方法ですと、

1日の食事バランスも、1食の食事バランスもとれやすいと思います。

 

8、食事のタイミング:

睡眠直前に食べると、摂取エネルギーが同じであっても、体重増加につながるのでご注意。

 

9、食事方法:

よく噛んで、ゆっくり、楽しく食べるようにする。

以前、俳優(好きな人)の写真を、食事する所に大きく掛けたら、自然に小口になり、

体調も良くなったと言われましたが、

それはとても素晴らしく画期的な手段だと思いました。

 

自分が思わず良い姿勢になってしまう様な方法を、独自に考え実行する事は、

体型や健康改善にもつながる、非常に効果的で楽しい方法だと思います。

 

10、食べる順序の工夫:

カロリーの低いものから食べ始めると、食べ進めるうちに吸収率は段々下がって行くので、

吸収率の高い時にカロリーの高い物を食べるより良い結果が得られます。

 

加熱した野菜料理を、よく噛んで、最初に食べ切ってから、

メインのおかずで主食を食べるという順序がオススメです。

 

これは、懐石料理やフルコースと同じ食べ方になります。

 

1.温かいお茶

2.温かいお茶 

.野菜の前菜 

.刺身など 

.野菜の炊合わせ

.肉料理などの焼物 

.ご飯 漬物 味噌汁 

.お茶

(野菜に始まりご飯で終わり、

 淡い味から始まり濃い味で終わり、

 お茶に始まりお茶で終わる)

 

正式な懐石料理の食べ方では、

ご飯の時におかずがなくなるので、庶民には不自然な感じもしますが、

殿や姫が「ずっと若くて美しく健康にいられるように」と、

当時の御小姓が考えた知恵だったのかと想像します。

 

そんな懐石料理の庶民的な食べ方への応用として、

「前菜に野菜料理を小鉢2つ分食べてから、メインのおかずでご飯を食べる」、

「鍋で野菜や肉や豆腐などをしっかり食べた後、ご飯か麺で鍋を〆る」

・・・等という食べ方がオススメです。

食事は、美味しく楽しく食べるのが一番です。

 

また、骨付きの物や、食べにくい物は、可食部分に比べて見た目に大きい事が多く、

食べるのに時間がかかる為、少ない量で満腹感が得られ、過食防止になります。

食べ難い部分には美味しい物が多いと昔からされていますので、そうした食品を選ぶ事は、

健康的に痩せる事への期待だけでなく味の満足感も一緒に得られてお得かもしれません!

 

盛付はバイキング形式にしないこと。 また、視覚的満足を大きくする意味で、

皿数を多くし、目からの満足感が得られるようにするのも手です。

 

良い食品

緑黄色野菜:

水溶性のビタミンCだけでなく、脂溶性のビタミンAを多く含むので、

良質の油(ゴマ油、オリーブ油など)と一緒に炒める、炒め煮にする等の調理方法がオススメ。

 

淡色野菜:

緑黄色野菜と違い、脂溶性のビタミンAの含有量が少ないので、

量を気にする事無くタップリと食べても大丈夫です。

(喫煙者等ではビタミンA(βカロテン)の摂りすぎが体に悪効果となる恐れがあります)

生よりも加熱する調理方法を選択した方が、噛んでしっかり量が食べれて、

腸を冷やさない調理方法なのでオススメです。

 

海藻:

塩分を排出させてくれる水溶性のカリウムが沢山含まれていますので、

洗わない茹でこぼししないで食べられる海苔や青海苔や昆布が特にオススメです。

 

きのこ類:

骨の成長に必要なビタミンDやカリウムが豊富です。

 

蒟蒻類:

蒟蒻芋の蒟蒻セラミドには、皺伸ばし・保湿・美白アレルゲン反応の緩和などの

嬉しい効果があります。 痩せても皺が保湿により伸びることで、 

痩せた=ゲッソリではなく、痩せて若返った印象に変えることにつながると思います。

 

野菜・茸・海藻・蒟蒻は、料理の味を深めるなど美味しいだけでなく、

料理のボリューム感を増す事ができます。

 

料理はふんわり美しく盛ることで、目からの満腹感も大事ですが、

肉野菜炒めならば肉100gに野菜200gは軽く入りますので、これをガッツリと召し上がって

頂くのも宜しいかと思います。最初に、皿の半分を前菜だと思って噛んで食べて頂くと、

相当、口の筋肉を使うことができます。

この時、昔の殿や姫の気持ちで、良い姿勢をして下さると肩甲骨周辺や下腹部の筋肉も

相当、使うことになります。

食事中は良い姿勢を心がけ、普段使わない筋肉を余計に使う習慣をつけて下さいませ。

その姿勢でされる食事は、他人から見ると美しい印象になると思いますので、

自分の体も、他人からの印象も、両方が良くなって、とてもお得です。

 

主食:

炭水化物は、三度の主食以外での摂取を出来るだけ控え、

主食に、脂肪の燃焼を促すビタミンB群や、便通を良くする食物繊維も多く含まれる、

「胚芽米や玄米・麦など」をお好みで加える事も肥満の予防改善に繋がります。

 

時には、粥などの調理法で、水分でカサを引き伸ばす作戦も有効ですが、

粥は噛めない上に梅干し等の塩味の濃い食材を合わせる人も多く、

また、雑炊になると余計な塩分を摂る事になるので、あまりお勧めできません。

 

パンは御飯より水分量も嵩も少なく満腹感が得にくい上、満腹感を保ち難く、塩分もある。

麺は十分に噛めないし塩分が非常に多いので、痩せる食事としてパンも麺もオススメしません。

 

また、パンや麺は、ごはんと違い、十分なおかず量を必要とせずに食べられてしまうので、

意識しないと食事バランスは悪くなります。 その上、主食は最後の方で食べたいのに、

麺は「伸びる」という理由から一番最初になる事が多く、痩せる目的の食事としては、

日本人には、主食が「ご飯」である和食が一番適していると考えます。

 

蛋白質:

魚は、見た目に大きい骨付き肉や、お頭つきの魚などが痩せる食事として効果的です。

卵は、完全栄養食品なので1日1個召し上がるのも良いと思います。

LDLchoが高い方は、料理や食品などに含まれる隠れた卵を気にして、

平均的に1日1個までと考えると楽しく召し上がれると思います。

 

乳製品は、カルシウム源として貴重であるので、牛乳なら1日1杯(200cc)は必要

(砂糖の入っていないヨーグルトに置き換えても良いです。飲むヨーグルトなどには

 砂糖が入っているものが多いので、知らずに沢山の砂糖を口にしてしまいますので、

 避けて頂けると嬉しいです)。

 

また、医師から厳格なエネルギー制限を指示されている場合には、

スキムミルク等を料理の中に入れて利用するとカルシウム摂取にも味にも良いです。

(よく勘違いされている方がいらっしゃいますが、牛乳と違い、豆乳には牛乳のような豊富

なカルシウム源にはなりませんので、豆乳を利用するよりは、カルシウムが多く含まれてい

るスキムミルクを調理に利用すると良いです)

 

大豆製品は、良質の蛋白質を含み、ボリューム感も出易いので、肥満防止に良いです。大豆

の発酵食品である納豆を食べるとビタミンKを腸内で増やす事ができ、更に体に良いです

(ワーファリンを飲んでいる方は、薬との飲み合わせが悪く、薬の効果が得られにくくなる

 場合がありますので、ワーファリンを飲んでいる時には納豆は禁止となります)。

 

脂質:

バター、ラード、ヘッドなど、動物性油脂の使用は避ける。

オリーブオイルやごま油などの良質な植物油の利用を。

 

果物:

果物の過剰摂取はエネルギーや炭水化物の取り過ぎにつながるので必要量を確認の上、

適量の摂取目安を知っておくこと。

 

砂糖類:

甘味料はダイエットシュガーなどを利用し、砂糖・黒砂糖・蜂蜜などは出来るだけ

使用を控える。

また砂糖の入った飲み物は、知らぬ間に砂糖を過剰に摂取してしまうので、

飲まぬよう気をつける。

 

アルコールもカロリーが高い上つまみが欲しくなるので痩せたい時には避けるのがベスト。

 

バランス良く沢山食べて、良い筋肉をつけて、良い姿勢で痩せなくては、

本当の改善にはなりません。

栄養指導教室にて、コツを伝授させて頂きます。

 

当院診察の後、どうぞお気軽にお越しくださいませ。

 

 

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